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森の中の自家焙煎コーヒー店「カフェウォールデン」で猫と音楽の生活

Acoustic Walden BANDの安曇野日記 Vol.1660「北斗星」の巻

Acoustic Walden BANDの安曇野日記 Vol.1660「北斗星」の巻

みなさんこんにちは、Acoustic Walden BANDの安曇野日記の時間です。

ここまで1660回も書いてきた安曇野日記に、一度しか書いていないと記憶しているエピソードがあります。

もう一度書きます。

昔、僕が大怪我をして、ある事情から上野駅発の寝台特急北斗星で札幌に向かった話は何度か書きました。
怪我の事情などは割愛します。

もう一度書きたいのは、北斗星の中での出来事です。

僕は時々意識がなくなりそうな痛みの状態で、上野駅で札幌行きの当日特急券を買いました。
上野駅の13番ホームは北斗星のために増設されたような一番端っこにある長いホームで、まともに歩けるような状態ではなかった僕は、実際に駅の構内で意識が遠のきそうな瞬間があったと記憶しています。

B寝台の下の座席を希望しましたが、あいにく満席で中段のベッドになりました。
仕事も中断して、何度か転院した僕のお金はようやく札幌までの切符を買える程度でした。
札幌の知り合いの医者が「絶対に関節固定術はするな、なんとか札幌まで来るように」と言ってくれた言葉だけが頼りでした。

少しずつ動き出した北斗星ですが、僕には実感が湧きませんでした。
なぜかすべてが幻のように思えたのです。
そして、おそらくは熊谷付近まで通路で寝ていました。
実際は意識を失っていた、中段ベッドに上る体力と筋力がもうなかったのです。

JRの名誉のために書きますが、検札の車掌さんが鶯谷駅を通過直後くらいに来られた時に僕は通路の補助いすに腰かけていました。
ただ、そのあとの記憶がありません。
そして、おそらくは見かねたおばあさんが僕に声をかけてくれました。
どうぞ下段のベッドをお使いください、とおっしゃるのです。

不覚にもお礼を申し上げる余裕もなく、眠りに落ちました。
考えると、人間にお礼を言うことが嫌だったのかもしれません。
僕は今でもこの時のことを恥じていて、出会った人には缶コーヒーを差し上げるようにしています。

目が覚めると目の前に海が広がっていました。
一目で北海道の海だとわかりました。
七飯あたりの噴火湾、ゆるやかなカーブから見える駒ケ岳。

そして目の前にニコニコした、それでも慎ましやかなおばあさんが座っていました。
そして僕にサンドイッチと飲み物を差し出してくれたのです。

何を話したかおぼえていません。
涙をこらえるのに必死だったからです。

親のことも、家族のことも聞かれませんでした。
ただ寄り添ってくれた。
そして、やさしく励ましてくれました。
札幌にいるお嬢さんに会いに行かれるとおっしゃっていた。
僕の年頃のような娘さんだとも言っておられた。

それ以外の余計なことは、なにも聞かれなかった。

僕は今でも未熟な人間で、客観的に物事を見るようにしているつもりですが、相手の物差しが主観であると判断すれば攻撃に転じます。
正確にはこちらも主観で答えるわけですが。

それでも、客観視した上での人さまへの愛情は失わないようにしてきたつもりです。
それが本当の愛情だと考えているからです。

愛情をシェアしませんか。
新型コロナが来たら、みんなで立ち向かえば良い。

僕は若いギタリストの森下を普段はボロクソに言っていますが、人として尊重しています。
我々50代60代のような老人よりも、ゆとり世代と言われている若者の方がはるかにマナーも礼節もきちんとしています。

若者に笑われないように、僕は時々北斗星で出会ったおばあさんのことを思い出します。

牧 裕二

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