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森の中の自家焙煎コーヒー店「カフェウォールデン」で猫と犬と音楽の生活

Waldenの安曇野日記 Vol.42

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Waldenの安曇野日記 Vol.42「ウォールデン少年寝台特急瀬戸号に乗る」の巻 その3


本州の宇野港から乗った連絡船が四国の高松に着きました。
国鉄高松駅からさらにディーゼル急行に乗り継ぎ、香川県の多度津という街に向かいます。
多度津からさらに瀬戸内海を走る汽船に乗って、ようやく目的地の小さな島に着くのです。

島には汽船が着岸できる桟橋がないために、上陸するには漁師さんの小船に乗り換えるしかありません。
子供や女性が先に乗り込み、最後に大人の男性が小船に乗り移ります。
映画タイタニック号のシーンのようでちょっと感動します。
ポンポン汽船のような小さな船で島に上陸すると、沖合いに泊まっていた汽船はそれを見届けてから動き出します。
潮の香りとディーゼルの匂いが混ざったような、なんともいえない甘酸っぱい感覚です。

さて、ウォールデン少年にとってはこの坂道だらけの小さな島は、見るもの聞くものすべてが新鮮で、驚きに満ちていたのでした。
島の人たちは頭の上に荷かごを乗せて、急な石造りの階段をトントンと登って行きます。
あわてて追いかけて行くと、小さな小径が途中からいくつにも分かれていて、まるで島全体がかくれんぼをしているようです。
道に迷ってふと気がつくと、夏の日差しと石かべの日陰、そしてその合間からキラキラと下の方に光って見える瀬戸内海。
ウォールデン少年は、また静寂の中に一人取り残されたような気分になりました。

ずっと後になって、映画「男はつらいよ」寅次郎の縁談編のロケでこの島を使い、マドンナ役の松坂慶子さんが島の石階段からふいにあらわれるシーンがありました。
その階段は、ウォールデン少年が下の浜に一軒だけある、駄菓子屋さんで買ってもらったラムネを飲みながら駆け上がっていた階段だったのです。

そんな島でのある時、ウォールデン少年は足ひれと水中メガネをつけて海底探検に出ることにしました。
海の底に何があるのか、調査をすることにしたのです。
半日一生懸命、海の中に潜って、いろいろなものをひろってきました。
キラキラ光る貝殻のかけらや、大きな貝なんかです。
ウォールデン少年的には、人間のもぐれる深さの限界を越えた調査をしていたのですが、おぼれる寸前に目の前を見たら男の人の足があったりしました。
波に押されていて、ほとんど海岸だったりして。

調査中、大発見をしました。
それは旧日本海軍が残した不発弾で、慎重に運ばないと爆発する危険があるものでした。
ウォールデン少年は、重大な任務を負っておじさんのところへ爆弾を持って報告に行ったのでした。

「たっ、たいへんです、海の中に爆弾が落ちていました」
「なに?本当か、そりゃ大変なことになった。どれどれ、あぶないからこっちによこしなさい」

しばらくして

「君、これどこから持ってきたの?」
「はい、海の深いところに落ちていました」

「ダメだよ、お墓の花挿し持ってきちゃ」

おわり

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